運動は、健康管理のために誰にでも必要ですね。一見、運動はしてはいけないような妊婦さんにも実は、適度な運動は必要なのです。安産で出産するためにも、産まれてくる赤ちゃんの成長のためにも、出産後のキレイなボディーになるためにも、運動は必須と言えます。そこで、わざわざ外に出なくても、毎日家で出来る運動を紹介しましょう。
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妊婦さんにも運動が必要な理由
妊娠する事で、女性の身体には様々な変化が生じます。変化によって幾つかの症状が現れます。
- 妊娠12週までに疲労感を感じやすく、普段よりも多く休息が必要となる。
- 妊娠中は胎児の成長につれて子宮に送らなくてはならない血液の量が増えるため、母体の心臓には通常より負荷が掛かるるため、心雑音や不整脈が現れる事がある。
- 大きくなっていく子宮により、脚や骨盤部から心臓に戻る血流が妨げられるので、その結果、浮腫みが生じる事が多くなる。特に脚や腟口周囲(外陰部)に静脈瘤が出来やすくなる。
- 子宮が大きくなると膀胱が圧迫されて膀胱の容量が小さくなるため、普段よりも早く尿が溜まるようになる。頻尿になりやすい。
- 妊娠中は、血中濃度が高くなるので、二酸化炭素を多く吐き出し、呼吸が僅かに速くなる。その為、気道が狭くなり、その結果、鼻詰まり、耳管(中鼻と鼻腔を結ぶ管)の閉塞が起こる。
- 胸焼けやゲップが多くなる。
- 骨盤内の関節と靭帯がゆるんで柔軟になる。大きくなった子宮の重みを反り返って支えるために背骨のカーブがきつくなり背部痛が生じやすい。
- 身体の重みにより、肩凝りになりやすい。
- 便秘になりやすい。
- 身体変化や神経の使い過ぎによるストレス。
以上が主に妊娠によって、現れやすい身体の変化になります。(※個人差はあります。)
このような症状の大半は、出産後には消失します。だからと言って放置して良いとは言えません。症状が酷い場合は、妊娠糖尿病などの病気を引き起こす可能性もあるからです。
そこで、上記の症状を少しでも改善するのに運動が必要になってくるのですね。また、お腹の中に人が入っているわけですから、その重さを支えていく上でも体力が必要です。分娩時ともなれば、長丁場になりますので、そのためにも尚更、体力は必須ですね。
身体状態の不快な症状改善と体力増強のため、適度な運動をしていかなくてはなりません。
妊娠中の運動がもたらす赤ちゃんへの効果
運動は、実は妊婦さんの身体に良い影響をもたらすだけではなく、お腹の赤ちゃんにも良い影響をもたらす事が、アメリカの大学の研究で明らかになっております。
胎児にもたらす良い影響は、
- 脳の成長・聴覚記憶能力向上
- 赤ちゃんの肥満防止効果
この2点が主に挙げられます。実際にモントリオール大学とサント・ジュスティンヌ大学付属医療センターの合同研究チームの研究結果からこの2つの効能が判明しております。
調査の結果、妊娠中に運動をしていた女性の赤ちゃんの脳は、運動を全くしていなかった女性の赤ちゃんよりも効率的に様々な音を区別が出来る、聴覚記憶能力が優れている事が判明しました。研究では、5〜7ヶ月目の妊娠中期になる女性を「週に3回20分程度の運動をする」と「運動を全くしない」という2つのグループに分けて調査しました。
先方のグループは、ウォーキング、軽いジョギング、水泳など少し息が切れる程度の運動をしました。出産後、赤ちゃんの脳波を調査。調査方法は、生後8〜12日目までの新生児を対象に行い、睡眠中の赤ちゃんの頭部に124個の電極を装着し、様々な種類の音を聞かせて、脳波を調べるという実験です。
こうした実験方法から、妊娠中に運動が胎児脳や聴覚記憶能力を向上させる事が分かったのですね。
元々、運動は、酸素をしっかりと脳へ送り刺激をし、老化を防ぐどころか、頭の回転も早くするという事がこれまでの研究結果から分かっております。よって、臍の緒で母親と繋がっている胎児の脳にもその効能が波及するのかもしれません。
尚且つ、運動が妊娠中の母体の体重管理のみならず、赤ちゃんの肥満防止にも効果がある事が同様に判明しております。この効能も母体と臍の緒で繋がっている事が関連しているのかもしれませんね。
このように、妊娠中の運動は、妊婦さんだけではなく、胎児にも非常に良い影響を与えます。
どのタイミングで運動するのがベスト?
妊娠初期は、流産や出血の恐れがあるため、あまり妊娠初期の運動は、一般的に勧められておりません。しかし、出産や赤ちゃんの世話は、体力が必要ですので、妊娠初期から体力作りのためにも運動は必要です。では、妊娠初期の時には、どの程度の運動であれば問題ないのでしょうか?
妊娠初期である週15週までは、流産しやすい時期と言われております。特に妊娠12週未満の流産が最も多いのですね。このような妊娠早期に起こる流産は、運動や仕事が原因というよりは、染色体異常が原因なのです。(※勿論、仕事などによるストレスもあり得る場合もあるかもしれませんが、そのような事が原因である確率が高いわけではないという事です。)
妊娠初期の主な身体の不調は、つわりと便秘です。つわりの原因ははっきりと分かっておりませんが、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが急激に分泌される事により、身体がついていかず、胃腸の機能が低下したり、脳の嘔吐中枢が刺激されて出る症状であると考えられております。また、妊娠初期の身体は、受精卵を異物として認識して一種のアレルギー反応を起こしているとも考えられているのですね。
妊娠初期の便秘の原因は、ホルモンバランスの変化や、つわりによる食生活の変化、ストレスなどによる自律神経の乱れなどが考えられます。
軽い運動をする事で、血流を促し、腸の動きも活発になるため、多少は上記にある身体の不調は緩和されます。また、運動は、気分爽快になり、妊娠によるストレスも緩和され自律神経のバランスも整える事にも繋がっていきます。
それから、ほとんどの方が、妊娠初期の時に運動をしても問題ありませんが、胎児が双子や三つ子の場合は、運動は控えた方が良いとされております。また、新しくスポーツを始める場合は、妊娠後12週以降が良いとされております。また、体調不良を感じる時はお休みしましょう。運動中に出血があったり、お腹が張っていると感じた時は、かかりつけの産婦人科医に相談してください。
妊娠初期にお勧めの運動は、
- ウォーキング
- ヨガ
- スイミング
- エアロビクス
などが挙げられます。マタニティ用のヨガ、スイミング、エアロビクスがありますので、是非、試してみましょう。
臨月を迎える段階になりましたら、同様に運動は必要です。臨月に運動する事で、出産に備えて子宮口を開きやすくする、股関節を柔軟にする、分娩時の体力を付けるという安産に繋がる効果が期待出来ます。
お腹がドンドン大きくなり、赤ちゃんも子宮内の下の方に下がり、恥骨や股関節に痛みを感じやすくなるので、運動する気は起こらないかもしれませんが、安産のためにも、是非、運動を心掛けてくださいね。
海外の妊婦さん事情 ここが日本と違う
参考までに海外での妊婦さん事情を紹介しますね。日本での常識とは、違う面があります。
日本では、冷えは大敵であるという常識ですので、妊娠をすると腹帯を勧められる事があります。身体が冷えるとお腹の張りや便秘など、体調不良を招くので、妊娠中は赤ちゃんへの影響を配慮して、極力身体を冷やさない様に注意をします。
しかし、海外、特にアメリカでは、妊娠中の冷えについては特に心配しておりません。とにかく、運動をする事で代謝が良くなり、血行が良くなりますので、冷えは特に気にしないのですね。妊娠中の運動は、日本よりも盛んに行われております。
また、海外のスーパーモデル達も実践しているというエキササイズも盛んです。数々のモデルや女優など多くの有名人のトレーナーを務めてきたフィットネスを専門としている、トレーナーAndrea Orbeckによるエキササイズが人気なのですね。妊婦さん向けのフィットネスも手がけており、とても人気があるようです。
Andrea Orbeckの公式サイトでは、実際のワークアウトの方法も紹介されておりますので、興味がある方は、チェックしてみると良いでしょう。
家で出来る運動5選
最近の妊婦さんは、出産するギリギリまで仕事をしている方が多いですね。そうなると、運動をしたくてもなかなかフィットネスに通う事も時間的に難しいでしょう。
そこで、通わなくても家で出来る運動5選を紹介していきますね。
◉ マタニティビクスとマタニティヨガ
マタニティビクスとは、妊婦さん向けのエアロビクスとヨガをアレンジした運動です。ヨガ自体が、鼻呼吸をしながらゆったりとした動きで行いますので、リラックス効果があり、自律神経のバランスが整っていきます。妊娠中の不安やストレスを解消するのに適しております。
この2つのエキササイズは、最近では定着しており、産婦人科などでもレッスンが行われております。
家で出来る運動として、DVDが発売されており、楽天ブックスなどで購入出来ます。スタジオ・ヨギー監修のマタニティヨガのDVDは、価格も手ごろで、お勧めですね。日本マタニティフィットネス協会監修マタニティビクスのDVDも楽天などで購入できます。
◉ 室内ウォーキング
ウォーキングは、妊婦さんの間では、手軽に始められやすい事もあって、人気がありますが、天候が悪いと出来ませんね。勿論、仕事をしている妊婦さんであれば、通勤時を利用する事も可能ですが、出来れば、家で出来る運動としてウォーキングも入れたいところです。
家でのウォーキングバージョンとして、タイマーを使って、足踏みをするのですね。外でするウォーキングのフォームを意識して、手を前後に大きく振って足を少し高めに上げて足踏みをします。10分〜20分すると良いでしょう。
身体が温かくなり、血流が良くなっている事を実感出来ます。
◉ スクワット
通常のスクワットではありませんよ。妊婦さん向けのスクワットです。こちらも家で出来る運動の1つとして、また出産をスムースにする運動としてお勧めです。
やり方は、
- 両足を肩幅より少し広く開いて直立。両手を頭の後ろで組む。
- 背筋は真っ直ぐにしたまま、腰を両足の間に落とす。
- しっかりと足を開いて、つま先と膝を外側へ向ける。
1日に50回〜100回程度を目標に自分のペースで行ってください。10回を5セット行うなど、少ない回数を複数のセットで行うようにしましょう。
膝を痛めないように、必ず「つま先の向かっている方向」と「膝の向かっている方向」が同じ方向を向くようにします。
※以前にブログで紹介した事があるスクワットのやり方は、妊婦さんはやらないでくださいね。そのやり方は、妊婦さんでない方や男性の方が対象です。
◉ 家事
清掃は、きちんとある一定の時間を継続して行うと、意外にカロリーを消費します。侮れない一種の運動になります。
以下の記事に家事による消費カロリーについて記載しておりますので、参考までにご覧下さい。
◉ 安産体操
安産体操とは、骨盤や股関節など産道周辺の筋肉を鍛えたり、柔らかくしたりする運動です。無理をしないでする事で、産道が広がりやすくなり、お産が軽くなると言われております。家で出来る運動ですので、毎日行う事で、体重管理も出来ますよ。また、運動が苦手な方、身体が硬い方でも簡単に出来ますので、お勧めです。
まとめ
妊娠中の運動は、妊婦さんだけではなく、産まれてくる赤ちゃんの脳の発達などにも良い影響を与えます。また体重が増加しやすいため、体重管理のためにも、産後のキレイボディーを目指すためにも運動は必要です。ただ、通常の状態ではありませんので、無理をせずに、常にかかりつけの産婦人科医に相談しながら、行いましょう。「初めての親子運動」の感覚で、産まれてくる赤ちゃんと一心同体で楽しく運動していきましょう。
産後のキレイボディーのための腰回し運動の動画付き記事がありますので、参考までにご覧下さい。因みにフラは、曲によっては、ゆったりとしたリズムの物もありますので、妊婦さんにとって適度な運動になりますよ。ハワイアンソングに癒されながらゆったりとしたリズムで踊る事が胎児にとっても良い影響を与えるかもしれませんね。