ハワイに行った事がある人なら、生の花のレイを貰ったり、お店で見たことがありますね。レイは、フラダンスを踊る時には必ず身に付けます。ハワイの香りに包まれてとても心地良い気分になります。実は、花や葉で作られるレイは、単なる花飾りではありません。ハワイアンにとっては、神々に捧げるものとして非常に神聖な意味のあるものなのです。ハワイの文化、フラダンスとの関係、レイに対するハワイアンの思いなどについて紹介します。
ハワイアンにとってのレイとは
レイとは、首に掛ける花飾りのことであり、日本でも馴染みがありますね。日本人にとっては、花飾りの一種でありますが、ハワイアンにとっては、単なる花飾りではありません。ハワイの神々に捧げるものとして、非常に神聖な存在であります。
ハワイでは、早朝にレイを作る為の花を摘みに行きます。そして、オリという、日本では言えば祝詞のような言葉を詠唱しながら、花を摘みます。この事は、ハワイでも日本と同様に、万物全てに神が宿るという八百万の神信仰からきております。
神様のものである花を頂くことへの赦しと感謝の気持ちを込めて花を摘むのです。そして、集めた花でレイを作っていきます。今は、お店などで既製品が販売されており、誰でも購入出来ますが、本来、レイは、家族、恋人、親友など自分にとって大切な人に贈るものです。
元々、レイは数年前からポリネシアの島々で習慣として使われていたものです。その習慣がハワイにも伝わり、更に意味の深いものとして使用されるようになりました。上述にもある様に、神へ捧げる為に、または親愛なる人の為に作られる他に、社会的な地位を誇示する為、人生の中の重要なイベントを祝う為にも作られる様にもなってきました。
そして、フラダンスを踊る時にもレイを着けます。カヒコという古典フラを踊る時は、神や王族に敬意を込めますので、それに相応しい植物をレイにして身に付けます。アウアナという皆さんがよく見かける軽快な、またはゆったりとしたスタイルの現代フラを踊る時は、歌詞に表現されている内容に合わせた花や植物をレイにして身に付けます。
このように、ハワイアンにとってのレイは単なる花飾りではなく、生活、信仰、儀式などに関わり、一種の文化の要素があるのですね。ハワイでは、1928年から毎年、5月1日に「レイデイ」が定められております。各島でレイの祭典が開催されます。レイのコンテストも行われ、優勝者は栄誉と賞金が貰えるのです。
ハワイアンにとってのレイは、生活の一部、ハワイの文化そのものなのです。観光で訪れる私達も、ハワイの文化を理解した上で滞在するとより意義のあるものになるでしょう。
フラダンスとレイの関係
前章でも述べましたが、フラダンスとレイは密接な関係にあります。イベント、ショーなどで踊る時に衣装と共にレイを身に付けます。身に付けるレイは、適当に自分の好みで選ぶものではありません。原則、ハワイアンソングで歌われている歌詞の内容、背景から、レイに使用する花、植物を選定します。
また、ハワイは主に8島でなりたっておりますが、各島に島を代表する花が決められております。また各島には代表する色も併せて決められております。
- オアフ島 イリマ 黄色
- マウイ島 ロケラニ ピンク色
- モロカイ島 ククイ 緑色
- ハワイ島 オヒアレフア 赤色
- カウアイ島 モキハナ 紫色
- ラナイ島 カウナロア オレンジ色
- ニイハウ島 ニイハウシェル 白色
- カホオラベ島 ヒナヒナ グレー色
ハワイアンソングには、各島にその土地の事を謳った島歌があります。島歌を踊る時には、その島のカラー、歌詞の意味を背景にレイで使用する花、植物を決めていきます。イベントなどで踊る時は、ハワイでも生の花ではなく、フェイクを使用しますが、基本は歌詞の内容に沿って着用します。
特にコンペティションやセレモニーの時には、レイや頭に飾る花飾りは、必ず生の花、植物を使用します。コンペティションでは、歌詞の内容に沿って、レイや花飾りが作られているかなども審査の対象になります。
年に1度、ハワイ島ヒロで、ハワイ全島上げて競い合う「メリモナーク」という大きなフラダンスのコンペティションが開催されます。このコンペティションでは、ソロ部門、カヒコ(古典フラ)部門、アウアナ(現代フラ)部門の3つの部門に分けられております。各部門での上位チーム、そして総合での上位チームに表彰されます。
このコンペティションでは、ハワイ全島のハラウ(チーム)が集まり、生のレイや花飾りで会場が満載になるので、会場は美しい香りに包まれているとのこと。また、競技だけではなく、学校の卒業式にもレイが使用されます。
筆者のフラダンスの師匠、クムフラは、ハワイ島に住んでおります。時折、クムは、自分の子供の卒業式をフェイスブックに投稿をしております。卒業生は、顔までも埋め尽くしてしまうほどの生のレイを首に掛けているのですね。家族や沢山の知人からレイをプレゼントされるのでしょう。
このような事から、ハワイアンの人々が、如何に自分達の伝統文化を守り、大切にしているかがよく分かります。ハワイアンの人々にとって、レイは単なる花飾りではなく、伝統文化そのものであり、大切な親愛なる人へ、捧げるものなのです。
レイの種類とレイに使用される植物
レイには、頭に付けるもの、首に掛けるものがあります。頭に付けるレイは、レイポーと呼ばれております。頭の事をハワイ語でポーということからそのように言われております。レイは使用する目的によって、作り方が変わります。そして、その目的によって植物、花を選んでいきます。
では、まずレイの種類を紹介します。形状による種類として
- クイ 花などを1列に重ねただけのもの
- ヒリ 細かく編み込んだもの
- ウィリ ツイストをさせたもの
- ハク 複数の花、植物などを混ぜ合わせたもの
があります。
代表的な種類と利用目的については下記のようなものが挙げられます。
- プルメリアーとても香りが良い花で観光用によく利用されます。ビーズの様に繋いで作られます。日本でもプルメリアが育てられるようになってきております。
- ピカケージャスミンの事を指します。孔雀を意味します。カイウラニ王女が愛した花として有名です。蕾からやや開いた状態でビーズの様に繋いで作られます。
- ククイーククイの実にコーティングをして、ビーズの様に繋いで作られます。店頭でお土産として販売されております。ククイには、知恵を司るという意味があります。
- マイレーハワイの奥深い森林で育つハワイ固有種の一つです。とても香りが良く、人と人だけではなく、人と神を結ぶ象徴として大切にされております。マイレのレイは、輪にはせずに、下端を開いた状態にします。
- オヒアレフアーハワイ島火山付近の溶岩大地に生息しているハワイ固有種の植物です。古代ハワイでは、キラウエア火山に鎮座する女神ペレに奉納していたという事から、現在でも特別な花としてレイに用いられております。
- モキハナーカウアイ島山間部に生息しているハワイ固有種の希少植物です。レイにする時は花ではなく実をマイレと一緒に編み込んでいきます。
レイを頂いたら
前章で、ハワイアンにとってのレイの意味は、神聖なもの、生活に密着したものである事を述べてきました。店頭で、お土産としてフェイクなレイは販売されているとはいえ、現代でもハワイアンにとってのレイは、とても大切なものとして扱われております。
日本のフラダンス教室でも、発表会、教室主催のパーティーなどで、生徒さんから先生へまたはゲストの方々へレイを贈る習慣があります。生花のレイを頂いた場合は、枯れてきたら、ドライフラワーの状態で部屋に飾ります。
しかし、部屋のスペースの問題や自分の中での整理などで頂いたレイを片づけたいという時は、本来なら海に流します。原則、ゴミ箱に捨てるのは厳禁です。しかし、ハワイと違って日本では海に流す事は難しいので、そのレイに塩を撒いて丁重に感謝の気持ちを込めて片付けます。
贈って頂いた方への気持ちを尊重する事が礼儀になります。筆者自身は、生徒さん達から頂いたレイを今でもドライフラワーにして部屋に飾っております。また、生花のレイでなく、フェイクのレイでも、ゴミ箱に捨てる様な事はしてはいけません。フェイクのレイでしたら、デイホームなどの施設に提供したり、必要な人に提供するのも良いでしょう。
まとめ
近世になって、世界中の文化を享受出来るようになりました。しかし、それはあくまでも上面の部分だけであり、真の意味でその国の文化までは分かりません。他国のものを共有するということで、その国の文化、背景を学ぶ事も出来ればしていくと、相互理解も深くなり、より一層良い関係を生み出すことに繋がります。他国の文化を知らずにその国を訪れてしまうとトラブルになる可能性もあります。ハワイに興味がある方は、是非、文化も学んでみてください。今までとは違うハワイが見えてきます。